D5 出題比率 20% ・ 6 レッスン ・ 合計 67 分
プログラム管理と監督
Program Management & Oversight
このドメインでは、技術ではなく「組織としてセキュリティをどう運営するか」を学びます。ポリシーなどの文書体系、リスクの見積もり方、取引先の管理、法令遵守、監査やテスト、そして従業員教育まで、経営と現場をつなぐ仕組みが対象です。計算問題と用語の使い分けが出題の中心になります。
D5 5.1 読了目安 12 分
セキュリティガバナンスの要素
セキュリティガバナンス(Security Governance)とは、組織がセキュリティについて「何を・誰が・どう決めて守るか」を定める仕組みのことです。優れた製品を買っても、ルールと責任者が決まっていなければ運用は長続きしません。試験では、文書の種類と役割の名前を正しく使い分けられるかが問われます。
文書の階層: ポリシー・標準・手順・ガイドライン セキュリティ文書は上から下へ具体的になる階層で整理されます。ポリシー(Policy)は経営層が定める方針で「なぜ・何を」を示します。標準(Standard)はポリシーを実現するために必ず従う具体的な要件で、暗号アルゴリズムやパスワードの長さなどを指定します。手順(Procedure)は実際の作業ステップで、ガイドライン(Guideline)は推奨にとどまり強制力がありません。
ポリシー
標準(Standard)
必須の具体要件(何を使うか)
手順(Procedure)
作業のステップ(どうやるか)
経営層の方針
(なぜ・何を)
抽
象
具
体
ガイドライン(Guideline)
推奨・任意。強制力はない
ポリシーを頂点に標準、手順と具体化していく文書の階層。ガイドラインだけは任意です。 ポリシーの例: 利用規定(AUP: Acceptable Use Policy)、情報セキュリティポリシー、事業継続(BC)、災害復旧(DR)、インシデント対応、ソフトウェア開発ライフサイクル(SDLC)、変更管理 標準の例: パスワード標準、アクセス制御標準、物理セキュリティ標準、暗号化標準 手順の例: 変更管理手順、オンボーディング/オフボーディング手順、プレイブック(Playbook: 特定の事象に対する段階的な対応書) イメージ たとえば「社内データは暗号化して守る」がポリシー、「保存データはAES-256を使い、鍵は90日で更新する」が標準、「暗号化ツールの設定画面で手順1〜5を実行する」が手順、「可能ならハードウェア暗号化も検討するとよい」がガイドラインです。同じテーマでも文書の層によって書かれる内容の粒度が変わります。
外部要因とポリシーの見直し ポリシーは社内の都合だけでは決められません。規制(Regulatory)、法律(Legal)、業界基準(Industry)、そして地域・国・グローバルといった事業範囲ごとの要求を考慮します。事業の拡大や法改正があればポリシーは影響を受けるため、定期的な監視と改訂(Monitoring and revision)が欠かせません。
ガバナンスの構造 構造 特徴 取締役会(Board) 組織全体の方針と責任を最終的に負う 委員会(Committee) セキュリティ委員会など、特定テーマを審議する 政府機関(Government entity) 外部から法規制を課す主体 集中型(Centralized) 本社の単一組織が方針・予算を一元決定。一貫性が高い 分散型(Decentralized) 部門や子会社が独自に決定。柔軟だが一貫性を失いやすい
システムとデータに関する役割 データには「決める人」と「実行する人」がいます。オーナー(Owner)はデータの分類や利用目的を決める責任者で、多くは業務部門の責任者です。カストディアン/スチュワード(Custodian/Steward)はオーナーの方針に従ってバックアップやアクセス権の設定を日常的に行う担当で、IT部門が担うのが一般的です。プライバシー法制では、処理の目的と手段を決めるコントローラー(Controller)と、その指示で処理するプロセッサー(Processor)という区別が使われます。
組織内の役割
データオーナー
分類・利用目的を決める
方針
カストディアン
バックアップ・権限を実装
プライバシー法制
上の役割
コントローラー
処理の目的と手段を決める
指示
プロセッサー
指示に従って処理する
「決める人」と「実行する人」のペアで覚える
組織内のオーナーとカストディアン、法制上のコントローラーとプロセッサーは、いずれも「決める側」と「実行する側」のペアです。 試験のポイント 試験では「必須で具体的な技術要件」なら標準、「推奨で任意」ならガイドライン、「退職者のアカウント放置」ならオフボーディング手順の見直し、というように文書の層を言い換えた問題が出ます。役割の問題では、分類を決めるのがオーナー、実装するのがカストディアンと覚えてください。
ポリシーPolicy
経営層が定める上位の方針。なぜ・何を守るかを示します。
標準Standard
ポリシーを満たすために必ず従う具体的な技術要件や設定値です。
手順Procedure
作業を実行するための段階的なステップを記した文書です。
ガイドラインGuideline
推奨事項をまとめた文書で、強制力はありません。
利用規定AUP: Acceptable Use Policy
会社の情報資産やネットワークの許される使い方を定め、従業員に署名を求めます。
プレイブックPlaybook
特定のインシデントなどに対して、誰が何をするかを段階的に示した手順書です。
集中型/分散型ガバナンスCentralized / Decentralized governance
意思決定を一か所に集めるか、各部門に委ねるかの違いです。
データオーナーData owner
データの分類と利用目的を決定し、最終責任を負う人です。
カストディアンCustodian / Steward
オーナーの方針に従い、バックアップやアクセス制御を実装・運用する担当です。
D5 5.2 読了目安 15 分
リスク管理プロセス
リスク管理(Risk management)とは、すべての脅威を防ぐのではなく、「どのリスクにどれだけお金と手間をかけるか」を合理的に決める活動です。試験では計算問題と用語の分類が頻出です。
リスクの特定とアセスメントの種類 まずリスクの特定(Risk identification)で、資産・脅威・脆弱性を洗い出します。次にリスクアセスメント(Risk assessment)で大きさを評価しますが、その実施タイミングには種類があります。
種類 タイミング アドホック(Ad hoc) 重大な脆弱性の公表など、必要が生じたときに臨時で行う 定期的(Recurring) 年1回など、あらかじめ決めた間隔で行う 一回限り(One-time) 新システム導入や企業買収など、特定の案件のために1度だけ行う 継続的(Continuous) ツールで常時監視・評価し続ける
定性的分析と定量的分析 定性的分析(Qualitative)は、発生可能性(Likelihood/Probability)と影響(Impact)を高・中・低のような段階で評価し、リスクマトリクスに並べる方法です。数字がなくても素早く優先順位をつけられます。
中
高
高
低
中
高
低
低
中
小
中
大
影響(Impact)
高
中
低
発生
可能性
定性的
分析
発生可能性と影響を掛け合わせて高・中・低に分ける定性的なリスクマトリクス。 定量的分析(Quantitative)は金額で見積もります。資産価値(AV: Asset Value)に露出係数(EF: Exposure Factor、1回の事象で失われる割合)を掛けると単一予想損失額(SLE: Single Loss Expectancy)になります。これに年間発生率(ARO: Annualized Rate of Occurrence)を掛けると年間予想損失額(ALE: Annualized Loss Expectancy)が求まります。
AV 資産価値
例: 800万円
×
EF 露出係数
例: 25%(0.25)
=
SLE 単一予想損失
例: 200万円
SLE
例: 200万円
×
ARO 年間発生率
例: 5年に1回=0.2
=
ALE 年間予想損失
例: 40万円
1回あたりの損失 → 1年あたりの損失
SLE = AV × EF、ALE = SLE × ARO。「1回あたり」から「1年あたり」へ換算する2段階の計算です。 イメージ サーバーの価値が800万円で、火災が起きると25%が失われるならSLEは200万円です。火災が5年に1回ならAROは0.2なので、ALEは40万円です。対策の価値は「導入前ALE − 導入後ALE − 対策の年間費用」で判断します。
リスク登録簿と組織の姿勢 特定したリスクはリスク登録簿(Risk register)に記録します。各リスクにはリスクオーナー(Risk owner)を割り当て、悪化を早期に察知するための主要リスク指標(KRI: Key Risk Indicator)とリスク閾値(Risk threshold)を設定します。組織がどれだけのリスクを引き受けるかという姿勢はリスク選好(Risk appetite)と呼ばれ、拡張的(Expansionary)、保守的(Conservative)、中立的(Neutral)に分類されます。実際に許容できる変動の幅はリスク許容度(Risk tolerance)です。
リスク対応の4つの戦略 転嫁(Transfer): 保険や外部委託でリスクを第三者に移す 受容(Accept): リスクを承知のうえで引き受ける。ポリシー要件を満たせない場合は例外(Exception)や免除(Exemption)として正式に文書化する 回避(Avoid): リスクの原因となる活動そのものをやめる 軽減(Mitigate): 対策を導入してリスクを下げる 事業影響分析(BIA) 事業影響分析(BIA: Business Impact Analysis)は、システムが止まったときの影響を分析して復旧目標を決めます。目標復旧時間(RTO: Recovery Time Objective)は「どれだけ早く復旧するか」、目標復旧時点(RPO: Recovery Point Objective)は「どの時点までのデータ損失を許すか」です。平均修復時間(MTTR)と平均故障間隔(MTBF)は機器の信頼性を表す実績値で、可用性はMTBF÷(MTBF+MTTR)で求められます。
時間
最終バックアップ
障害発生
復旧完了
RPO
失ってよいデータの量
(=バックアップ間隔)
RTO
止まってよい時間
(復旧までの目標)
MTTR=実際の平均修復時間、MTBF=故障と故障の平均間隔
可用性=MTBF÷(MTBF+MTTR)
RPOは障害より前(失ってよいデータ量)、RTOは障害より後(止まってよい時間)を指します。 試験のポイント 計算問題はSLE = AV × EF、ALE = SLE × AROの2式を暗記すれば解けます。AROは「5年に1回=0.2」のように1年あたりに直すのが鍵です。「バックアップ間隔」と来たらRPO、「何時間以内に復旧」と来たらRTOです。例外・免除は受容の一種です。
単一予想損失額SLE: Single Loss Expectancy
1回の事象で失われる金額。AV × EF で求めます。
年間予想損失額ALE: Annualized Loss Expectancy
1年あたりの予想損失額。SLE × ARO で求めます。
年間発生率ARO: Annualized Rate of Occurrence
その事象が1年に何回起きるかの予測値です。
リスク登録簿Risk register
リスクとオーナー、KRI、対応状況を一覧管理する台帳です。
主要リスク指標KRI: Key Risk Indicator
リスクの増大を早期に検知する測定可能な指標です。
リスク選好Risk appetite
組織が引き受ける意思のあるリスクの量。拡張的・保守的・中立的があります。
目標復旧時間RTO: Recovery Time Objective
障害発生から復旧までに許容される時間です。
目標復旧時点RPO: Recovery Point Objective
許容できるデータ損失の範囲を時間で表したものです。
平均修復時間/平均故障間隔MTTR / MTBF
修復にかかる平均時間と、故障から次の故障までの平均間隔です。
D5 5.3 読了目安 10 分
サードパーティリスクの評価と管理
自社のセキュリティがどれだけ強くても、クラウドや委託先が破られれば同じ被害を受けます。サードパーティリスク管理(Third-party risk management)は、取引先に起因するリスクを契約前の評価、契約内容、契約後の監視という3段階で管理する考え方です。
ベンダーの評価と選定 契約前には相手を十分に調べるデューデリジェンス(Due diligence)を行います。具体的には、質問票(Questionnaire)でセキュリティ体制を確認し、侵入テストの結果、内部監査の証拠、独立した第三者によるアセスメント報告を求めます。相手の取引先まで含めて供給網を見るサプライチェーン分析(Supply chain analysis)も重要です。選定担当者が候補企業と利害関係を持つ利益相反(Conflict of interest)があれば、申告のうえ担当を交代させます。
契約書類の使い分け 取引の性質によって結ぶ文書が異なります。基本契約(MSA: Master Service Agreement)で支払条件や責任範囲などの共通条件を一度定め、個々の案件は作業範囲記述書(SOW: Statement of Work)や作業指示書(WO: Work Order)で定義します。サービス品質は測定可能な基準と罰則を定めたサービスレベル合意(SLA: Service-Level Agreement)で担保します。
NDA
秘密保持
交渉前に結ぶ
MSA 基本契約
支払・責任・知財など共通条件
SLA
品質基準と罰則
SOW / WO
案件1の作業範囲
SOW / WO
案件2の作業範囲
MOU / MOA
意向の確認(拘束弱)
BPA
提携・利益配分
委託以外の
関係で使う
MSAで土台を1回、SOWで案件ごとに
MSAを土台に案件ごとのSOWをぶら下げ、SLAとNDAで品質と秘密を補う。MOUやBPAは委託以外の関係で使います。 文書 目的 法的拘束力 NDA 秘密保持契約 交渉や取引で知った機密を漏らさない約束 あり MSA 基本契約 長期取引の共通条件 あり SOW / WO 案件ごとの作業内容・成果物・納期 あり(MSAに従属) SLA 稼働率・応答時間などの品質基準と罰則 あり MOU / MOA 覚書 協力の意向や役割分担の確認 弱い〜限定的 BPA 業務提携契約 パートナー間の利益配分と責任 あり
イメージ 外部にシステム開発を頼む場面を想像してください。まず話をする前にNDAを結び、長く付き合うと決まればMSAで共通条件を固め、最初のプロジェクトはSOWで範囲を決めます。運用まで任せるなら「月間稼働率99.9%、未達なら減額」というSLAを加えます。これで案件ごとに契約を一から交渉し直す必要がなくなります。
契約後の監視と交戦規定 契約後もベンダー監視(Vendor monitoring)としてSLAの達成状況や監査報告を定期的に確認します。自社や指定した第三者が直接検証できるようにするには監査権条項(Right-to-audit clause)を契約に含めます。ベンダーに侵入テストを依頼する場合は、対象範囲、実施時間帯、禁止手法、緊急連絡先を交戦規定(ROE: Rules of Engagement)として事前に合意し、想定外の影響を防ぎます。
試験のポイント 「共通条件を一度決めて案件ごとに別文書」ならMSA+SOW、「測定可能な数値と罰則」ならSLA、「拘束力の弱い意向確認」ならMOU、「後から直接検証したい」なら監査権条項、「テストの範囲と時間帯」ならROEです。文書名の略語を日本語の意味とセットで覚えてください。
デューデリジェンスDue diligence
契約前に相手を十分に調査・評価することです。
利益相反Conflict of interest
評価者が候補先と利害関係を持ち、公正な判断が損なわれる状況です。
監査権条項Right-to-audit clause
委託元が委託先を直接監査できる権利を契約で定める条項です。
基本契約MSA: Master Service Agreement
長期取引の共通条件を一度に定める包括契約です。
作業範囲記述書SOW: Statement of Work
個々の案件の作業内容、成果物、納期、費用を定めます。
サービスレベル合意SLA: Service-Level Agreement
稼働率や応答時間などの測定可能な基準と未達時の罰則を定めます。
秘密保持契約NDA: Non-Disclosure Agreement
取引で知った機密情報を第三者に漏らさない義務を定めます。
覚書MOU / MOA
協力の意向や役割を確認する文書で、法的拘束力は弱いか限定的です。
交戦規定ROE: Rules of Engagement
侵入テストの範囲、時間帯、禁止事項、連絡体制を事前に合意する文書です。
D5 5.4 読了目安 10 分
コンプライアンスとプライバシー
コンプライアンス(Compliance)とは、法律、規制、業界基準、契約で求められる要件を満たすことです。守れなかった場合の代償は大きく、「知らなかった」では済まされません。ここでは要件をどう証明し、違反すると何が起きるか、そして個人データを扱う際の役割分担を整理します。
コンプライアンス報告と違反の結果 コンプライアンス報告(Compliance reporting)には、経営層や監査委員会に向けた内部報告(Internal)と、規制当局や顧客に向けた外部報告(External)があります。違反の結果(Consequences of non-compliance)は1つとは限りません。
罰金(Fines): 規制当局や業界団体からの金銭的な罰則 制裁(Sanctions): 業務停止命令などの行政処分 評判の毀損(Reputational damage): 顧客や市場からの信頼の喪失 免許の喪失(Loss of license): 事業に必要な許認可の取消 契約上の影響(Contractual impacts): 取引停止や違約金 イメージ 決済代行会社がカード業界基準の年次評価を怠ると、カードブランドから違約金を請求され、改善しなければ決済処理の委託を打ち切られます。これは法律ではなく契約を通じて課される基準の例で、罰金と契約上の影響が同時に発生しています。
コンプライアンス監視 要件を守り続けていることを示すには継続的な監視が必要です。デューデリジェンス(Due diligence)は「十分に調べること」、デューケア(Due care)は「合理的に注意を払って行動すること」で、両者をそろえて初めて責任を果たしたと言えます。従業員がポリシーを読んで遵守を署名で誓う証明と承認(Attestation and acknowledgement)は、デューケアの証拠になります。署名状況の集計や設定の点検を自動化(Automation)すると、内部・外部の両方の監視が効率化できます。
プライバシーの基本概念 個人データの扱いには地域・国・グローバルの各レベルで法的な要求があり、事業範囲が広がるほど従うべきルールが増えます。データによって識別される本人はデータ主体(Data subject)です。処理の目的と手段を決める主体がコントローラー(Controller)、その指示で処理する委託先がプロセッサー(Processor)で、違反時の責任は主にコントローラーが負います。
データ主体
本人(顧客)
個人データ
権利行使
(削除・開示)
コントローラー
目的と手段を決める
責任を負う主体
指示
契約
プロセッサー
指示どおりに処理
(委託先・SaaS)
データインベントリと保持期間を整備しておく
どこに何があるか分からないと削除要求に応えられない
データ主体が提供した個人データをコントローラーが管理し、プロセッサーに処理を指示する。本人は削除などの権利を行使できます。 組織はデータの所有権(Ownership)を明確にし、どのデータがどこにあり、いつまで保持するかをデータインベントリと保持ポリシー(Data inventory and retention)で管理します。本人から削除を求められる忘れられる権利(Right to be forgotten)に期限内で応えるには、この台帳が不可欠です。
試験のポイント 「目的と手段を決める」のはコントローラー、「指示どおりに処理する」のはプロセッサー、「本人」はデータ主体です。組織内のオーナー/カストディアンと混ぜた選択肢が出るので注意してください。「削除要求に対応できない」と来たらデータインベントリ、「署名で同意」と来たら証明と承認です。
コンプライアンスCompliance
法律、規制、業界基準、契約の要件を満たしている状態です。
デューデリジェンス/デューケアDue diligence / Due care
十分に調査することと、合理的な注意を払って行動すること。両方そろって責任を果たせます。
証明と承認Attestation and acknowledgement
ポリシーを理解し遵守することを従業員が署名で誓う仕組みです。
データ主体Data subject
個人データによって識別される本人です。
コントローラーController
個人データの処理目的と手段を決定し、責任を負う主体です。
プロセッサーProcessor
コントローラーの指示に基づいて個人データを処理する主体です。
データインベントリData inventory
どの個人データがどのシステムにあるかを記録した台帳です。
忘れられる権利Right to be forgotten
本人が自分の個人データの削除を求められる権利です。
D5 5.5 読了目安 10 分
監査とアセスメント
ポリシーを作り対策を導入しても、「本当に機能しているか」は確かめなければ分かりません。監査(Audit)とアセスメント(Assessment)はその確認作業です。書類や設定を点検する監査と、実際に攻撃してみる侵入テストの2つの方向から学びます。
内部監査と外部監査 区分 実施者 例 内部(Internal) 組織内の部門や監査委員会 コンプライアンス点検、自己評価(Self-assessment) 外部(External) 規制当局や独立した第三者 規制検査(Examination)、第三者アセスメント、独立監査
内部監査は自社の都合で柔軟に行えますが、客観性には限界があります。顧客や規制当局に「管理策が有効である」ことを示すには、利害関係のない独立した第三者監査(Independent third-party audit)の報告書が最も信頼されます。監査の結果を文書で保証することを証明(Attestation)と呼び、監査委員会(Audit committee)は取締役会の下で監査活動を監督します。
イメージ 大口顧客から「御社の報告ではなく客観的な証拠を」と求められたら、自己評価の報告書を出しても満足してもらえません。独立した監査法人による報告書を提示するのが答えです。健康診断で「自分では元気です」と言うより、医師の診断書を見せるほうが信頼されるのと同じです。
侵入テストの形式 攻撃的(Offensive): レッドチームが攻撃者として侵入を試みる 防御的(Defensive): ブルーチームが検知と対応の能力を評価する 統合的(Integrated): 攻撃側と防御側がリアルタイムに情報を共有し、その場で検知ルールや手順を改善する(パープルチーム演習) 物理的(Physical): 建物への侵入や施錠の突破など物理面を評価する 環境区分と偵察 テスターに渡す事前情報の量で、既知環境(Known environment)、一部既知環境(Partially known environment)、未知環境(Unknown environment)に分かれます。情報が多いほど網羅的に、少ないほど実際の外部攻撃者に近い形で評価できます。テストの最初の段階である偵察(Reconnaissance)は、公開情報だけを使い対象に一切触れない受動的(Passive)と、ポートスキャンなどで対象に直接パケットを送る能動的(Active)に分かれます。能動的偵察は検知される可能性があります。
交戦規定(ROE): 範囲・時間帯・禁止事項を事前に合意
環境区分(テスターに渡す情報量)
既知環境
構成・コードまで全て
一部既知環境
構成図など一部だけ
未知環境
事前情報なし=外部攻撃者
情報が多い → 少ない
偵察(Reconnaissance)
受動的(Passive)
公開情報のみ。対象に触れない
能動的(Active)
スキャン等で直接触れる
事前情報の量による環境区分と、対象に触れるかどうかによる偵察の区分。実施前にROEで範囲を合意します。 試験のポイント 「構成図は渡すがソースコードや管理者権限は渡さない」なら一部既知環境、「事前情報なし」なら未知環境です。「パケットを一切送らずに求人情報やDNS登録情報を調べる」なら受動的偵察、「ポートスキャン」なら能動的偵察です。「攻守が同じ演習でリアルタイムに改善」と来たら統合的テストを選んでください。
証明Attestation
監査や評価の結果を、責任ある立場で文書により保証することです。
自己評価Self-assessment
組織が自らの管理策を点検する内部アセスメントです。
独立した第三者監査Independent third-party audit
利害関係のない外部機関による監査で、最も客観性が高い証拠になります。
統合的侵入テストIntegrated penetration testing
攻撃側と防御側が協力して検知・対応を改善する形式。パープルチーム演習とも呼ばれます。
既知/一部既知/未知環境Known / Partially known / Unknown environment
テスターに与える事前情報の量による区分です。
受動的偵察Passive reconnaissance
対象に触れず、公開情報から情報収集する手法です。
能動的偵察Active reconnaissance
スキャンなどで対象に直接通信して情報を得る手法。検知されることがあります。
D5 5.6 読了目安 10 分
セキュリティ意識向上の実践
どれだけ技術的な対策を固めても、従業員が1通のメールのリンクを押せば侵入は成立します。セキュリティ意識向上(Security awareness)は「人」を最後の防御線ではなく最初の検知センサーにするための取り組みで、教育の内容と効果の測り方の両方が試験範囲です。
フィッシングへの対応 フィッシング(Phishing)は、正規の組織を装ったメールで認証情報の入力や添付ファイルの実行を誘う攻撃です。見分けるポイントは、本物に似せた送信元アドレス、緊急性をあおる件名、表示と異なるリンク先、不審な添付ファイルです。
差出人:
support@examp1e-bank.co
件名:
【緊急】24時間以内に確認を
お客様のアカウントが停止されます。
下のリンクから今すぐ確認してください。
http://198.51.100.7/login
添付:
請求書_0917.zip
迷ったら開かず、報告ボタンで通報
① 送信元
似せたドメイン
② 緊急性
急がせて考えさせない
③ リンク先
IPアドレス・無関係な
ドメイン
④ 添付ファイル
zip・マクロ付き文書
送信元・緊急性・リンク先・添付の4点を確認し、迷ったら開かずに報告します。 組織は模擬メールを送るフィッシングキャンペーン(Campaign)で従業員の反応を測ります。クリックした人にはその場で短い補足研修を提供し、報告した人には感謝を伝えて報告行動を強化します。報告された不審メールには、調査し本人へ結果を返す体制が必要です。クリックした人を公表して責めると、本物の攻撃を受けたときに誰も報告しなくなります。
異常行動の認識 行動の種類 例 リスクのある行動(Risky) 機密ファイルの大量ダウンロード、個人クラウドへのアップロード 予期しない行動(Unexpected) 深夜の異常なログイン、普段使わないシステムへのアクセス 意図しない行動(Unintentional) 誤送信、USBの紛失、知識不足によるポリシー違反
イメージ 退職を申し出たばかりの従業員が、業務時間外に機密サーバーへ大量アクセスし、個人のクラウドにアップロードしようとした記録が残っていたとします。これは内部脅威(Insider threat)の典型的な兆候であり、リスクのある行動として直ちに調査すべきです。同僚が「最近様子がおかしい」と気づいて報告できるかどうかも、意識向上の成果の1つです。
従業員向けガイダンスと研修の内容 ポリシーとハンドブック: 守るべきルールの周知と署名 状況認識(Situational awareness): 周囲の不審な人物や行動に気づく習慣 内部脅威(Insider threat): 兆候の理解と報告経路 パスワード管理: 長いパスフレーズ、使い回し禁止、パスワードマネージャーの利用 リムーバブルメディアとケーブル: 出所不明のUSBや充電ケーブルを接続しない ソーシャルエンジニアリング: 電話や対面での情報の聞き出しへの対処 運用セキュリティ(Operational security): 業務情報をSNSなどで漏らさない ハイブリッド/リモート勤務: 自宅ネットワークの保護、画面の覗き見防止、VPNの利用 プログラムの開発・実行・報告 意識向上プログラムは、開発(Development)で対象者とテーマを決め、実行(Execution)で研修や訓練を行い、報告と監視(Reporting and monitoring)で効果を示します。効果を示すには、開始時に初期(Initial)の基準値を測り、その後も定期的(Recurring)に同じ指標を測って推移を報告します。フィッシング模擬訓練のクリック率と報告率、インシデント報告件数が代表的な指標です。
試験のポイント 「経営層に効果を示せ」と来たら、研修回数や資料のページ数ではなく「基準値を測り、定期的に同じ指標で推移を報告する」を選びます。フィッシング訓練の結果への対応は「クリックした人に即時の補足研修、報告した人に感謝」が正解で、公表や処罰は不正解です。意図しない行動と内部脅威の違いも押さえておきましょう。
フィッシングキャンペーンPhishing campaign
模擬フィッシングメールを送って従業員の反応と報告率を測る訓練です。
内部脅威Insider threat
従業員や委託先など内部の人物がもたらす脅威です。
リスクのある行動Risky behavior
データ持ち出しの試みなど、被害につながるおそれの高い行動です。
意図しない行動Unintentional behavior
誤操作や知識不足による無自覚なポリシー違反です。
状況認識Situational awareness
周囲の不審な人物や行動に気づき、適切に対処する意識です。
運用セキュリティOperational security
業務上の情報を外部に漏らさないための日常的な習慣です。
初期/定期的な報告Initial / Recurring reporting
開始時の基準値と、その後の定期測定で効果の推移を示す仕組みです。