D2 出題比率 22% ・ 5 レッスン ・ 合計 59 分
脅威・脆弱性・緩和策
Threats, Vulnerabilities & Mitigations
このドメインでは「誰が(脅威アクター)」「どこから(脅威ベクター)」「どの弱点を突いて(脆弱性)」攻撃してくるのか、そして攻撃をどう見抜き(指標)、どう防ぐか(緩和策)を学びます。試験では具体的なシナリオを読んで、攻撃者の種類や攻撃手法の名前、最も適切な対策を選ぶ問題が多く出ます。用語の意味だけでなく「状況から判断する」練習をしましょう。
D2 2.1 読了目安 10 分
脅威アクターと動機
セキュリティ対策を考えるとき、最初に問うべきは「誰が、なぜ攻撃してくるのか」です。攻撃者のことを脅威アクター(Threat actor)と呼びます。泥棒対策でも、空き巣とプロの強盗団では備えるべき鍵の強さが変わるように、相手の資金力や技術力、目的を知ることで、適切な対策の優先順位を決められます。
脅威アクターの種類 国家支援型アクター(Nation-state): 政府の支援を受け、豊富な資金と高度な技術を持ちます。長期間潜伏して機密や知的財産を盗むスパイ活動(Espionage)や、他国のインフラを狙う戦争目的の攻撃が典型です。高度な手口を長期間続けるため APT(Advanced Persistent Threat)とも呼ばれます。 未熟な攻撃者(Unskilled attacker): 技術力が低く、ネットで入手した既製の攻撃ツールをそのまま使う人です。スクリプトキディとも呼ばれます。動機は好奇心や自己顕示が多いです。 ハクティビスト(Hacktivist): 政治的・思想的な主張のために攻撃します。Webサイトの改ざんや DDoS によるサービス妨害、犯行声明の公開が特徴です。 内部脅威(Insider threat): 従業員や委託先など、正規のアクセス権を持つ人です。不満による復讐や金銭目的のほか、悪意のないミスも含まれます。正規の権限で動くため検知が難しい点が最大の特徴です。 組織犯罪(Organized crime): 金銭目的の犯罪グループです。ランサムウェアやカード情報の窃取を分業体制で行い、資金力・技術力ともに高いです。 シャドーIT(Shadow IT): IT 部門の承認を受けずに部門や個人が導入したシステムやクラウドサービスです。悪意はなくても、管理されていないため情報漏えいの温床になります。
資金力・リソース(多い→)
高度さ(技術力)↑
未熟な攻撃者
シャドーIT
ハクティビスト
内部脅威(権限あり)
組織犯罪
国家支援型
長期潜伏・スパイ活動
既製ツールを使う
脅威アクターを「資金力」と「高度さ」の2軸で配置した図。右上ほど資金力があり高度で、国家支援型が最上位に位置します。 アクターの属性で見分ける 試験では「内部か外部か(Internal/External)」「資金・リソースの多さ(Resources/funding)」「高度さ(Level of sophistication)」の3つの属性でアクターを比較させる問題が出ます。たとえば「市販されていない独自のマルウェア」「未公開の脆弱性を複数使用」「数年間潜伏」といった記述は、資金力と高度さが最高レベルの国家支援型を示すサインです。
動機を読み取る 動機 内容 典型的なアクター 金銭的利益(Financial gain) 身代金や情報の転売で稼ぐ 組織犯罪 スパイ活動(Espionage) 機密・設計データを密かに盗む 国家支援型 思想・政治的信念 主張を広める、抗議する ハクティビスト 復讐(Revenge) 解雇などへの報復 内部脅威 サービス妨害・混乱(Disruption/chaos) 業務を止める、社会を混乱させる ハクティビスト、国家支援型 脅迫(Blackmail) 情報の公開をちらつかせて要求 組織犯罪 戦争(War) 敵国のインフラ破壊 国家支援型
イメージ ある化学メーカーのサイトが改ざんされ「環境破壊をやめろ」というメッセージが掲示され、SNS で犯行声明が出された場合、主張の公開が目的なのでハクティビストです。一方、同じサイト改ざんでも「データを公開されたくなければ支払え」と要求されれば、動機は金銭的利益で組織犯罪が疑われます。手口が似ていても、動機からアクターを判断するのがコツです。
試験のポイント 問題文のキーワードで即答できるようにしましょう。「金銭要求なし+長期潜伏+高度な手口」なら国家支援型、「犯行声明+政治的主張」ならハクティビスト、「既製ツール」なら未熟な攻撃者、「正規のアクセス権を悪用」なら内部脅威、「IT 部門に無断で導入」ならシャドーITです。データ持ち出し(Data exfiltration)は動機ではなく「手段や結果」として問われることもあるので注意してください。
脅威アクターThreat actor
組織に害を及ぼす可能性のある個人や集団。種類ごとに資金力・高度さ・動機が異なります。
国家支援型アクターNation-state actor
政府の支援を受ける最も高度なアクター。スパイ活動や戦争目的で長期潜伏します。
未熟な攻撃者Unskilled attacker
既製の攻撃ツールを使う技術力の低い攻撃者。
ハクティビストHacktivist
政治的・思想的主張のために攻撃する活動家。
内部脅威Insider threat
正規のアクセス権を持つ従業員や委託先による脅威。検知が難しいのが特徴です。
組織犯罪Organized crime
金銭目的で分業体制をとる犯罪グループ。ランサムウェアの主な実行者です。
シャドーITShadow IT
IT 部門の承認を受けずに使われるシステムやサービス。管理されないため脆弱です。
スパイ活動Espionage
機密情報や知的財産を密かに盗む動機。国家支援型の典型です。
D2 2.2 読了目安 12 分
脅威ベクターと攻撃対象領域
脅威ベクター(Threat vector)とは、攻撃者が組織に侵入するために使う「経路」のことです。家にたとえると玄関、窓、換気口など泥棒が入り込める場所にあたります。そして、組織が持つ侵入経路の総和を攻撃対象領域(Attack surface)と呼びます。窓が多い家ほど侵入されやすいように、攻撃対象領域は小さいほど安全です。
組織の資産
データ・システム・人
メール・SMS・IM
人(なりすまし等)
添付ファイル・画像
無線LAN・Bluetooth
USB等の外部媒体
サプライチェーン
サポート切れOS
開放ポート・初期PW
組織の資産を取り囲む代表的な脅威ベクター。人・メッセージ・ファイル・ネットワーク・外部媒体・取引先など、あらゆる方向から攻撃が来ます。 主な脅威ベクター メッセージベース(Message-based): メール、SMS、インスタントメッセージ(IM)経由で悪意あるリンクや添付ファイルを送る経路。最も多い侵入口です。 画像ベース・ファイルベース(Image-based / File-based): 画像やドキュメントに悪意あるコードを埋め込み、開かせることで感染させます。 音声通話(Voice call): 電話でのなりすまし。後述のビッシングです。 外部媒体(Removable device): USB メモリなどを使った感染や情報持ち出し。駐車場に落ちている USB を拾って挿してしまう、といった手口があります。 脆弱なソフトウェア(Vulnerable software): パッチ未適用のソフト。端末にエージェントを入れて管理するクライアントベース方式と、ネットワーク越しに調べるエージェントレス方式で把握します。 サポート切れシステム(Unsupported systems): 修正パッチが提供されない古い OS や機器。 安全でないネットワーク(Unsecure networks): 暗号化のない無線 LAN、誰でも挿せる有線ポート、Bluetooth の不適切な設定。 開放ポート(Open service ports)と初期パスワード(Default credentials): 不要なサービスが外部に公開されていたり、製品の初期パスワードのままだったりする状態。 サプライチェーン(Supply chain): MSP(マネージドサービスプロバイダー)、ベンダー、部品供給業者など取引先を経由した侵入。取引先1社の侵害が多数の顧客に波及します。 人を狙うソーシャルエンジニアリング 技術的な防御がどれだけ強くても、人をだませば突破できます。人の心理を突く手法をソーシャルエンジニアリング(Social engineering)と呼び、試験で最も多く出題される分野の1つです。
手法 経路・特徴 見分けるキーワード フィッシング(Phishing) メールで偽サイトに誘導し情報を盗む 偽メール、偽ログイン画面 スミッシング(Smishing) SMS を使ったフィッシング ショートメッセージ、再配達 ビッシング(Vishing) 電話を使ったフィッシング 音声通話、自動音声 ビジネスメール詐欺(BEC) 役員や取引先になりすまし送金を指示 社長名義、至急送金、他言無用 プリテキスティング(Pretexting) もっともらしい口実を事前に作り込む 架空の監査、チケット番号 なりすまし(Impersonation) 本人や職員のふりをする 身分を偽る 水飲み場型攻撃(Watering hole) 標的がよく訪れるサイトを改ざんして待つ 業界団体サイト、頻繁に閲覧 タイポスクワッティング 打ち間違いに似せた偽ドメイン examp1e.com のような綴り ブランドなりすまし 有名企業のロゴや文面を模倣 正規サービスそっくり 偽情報(Misinformation/Disinformation) 誤った情報を広め判断を狂わせる SNS での情報操作
攻撃者側
被害者側
1. 偽メール送信
銀行や上司を装う
2. リンクを開く
緊急性で急がせる
3. 偽サイトで入力
本物そっくりの画面
4. 情報を窃取
不正ログインに悪用
防ぐポイント
送信元とURLを確認・MFA・教育
フィッシングの流れ。偽メール→リンクを開く→偽サイトで入力→認証情報が攻撃者の手に渡る、という4段階です。 イメージ 経理担当者に社長の正規アドレスから「極秘の買収案件で本日中に送金してほしい、他言無用」というメールが届いたとします。送信元が本物でも、社長のメールアカウント自体が乗っ取られている可能性があります。これはビジネスメール詐欺(BEC: Business Email Compromise)の典型で、「緊急」「秘密」「送金」の3点セットが揃ったら電話など別の手段で本人確認するのが正解です。
試験のポイント 経路で手法を区別させる問題が頻出です。メールならフィッシング、SMS ならスミッシング、電話ならビッシングと覚えましょう。「標的がよく見るサイトに仕掛ける」なら水飲み場型、「事前に作り込んだストーリー」ならプリテキスティング、「1文字違いのドメイン」ならタイポスクワッティングです。また、MSP の侵害で多数の顧客が同時に被害を受けるシナリオはサプライチェーン攻撃と判断します。
脅威ベクターThreat vector
攻撃者が侵入に使う経路。メール、USB、無線 LAN、取引先などがあります。
攻撃対象領域Attack surface
組織が持つ侵入可能な経路の総和。小さくするほど安全です。
フィッシングPhishing
メールで偽サイトに誘導し認証情報などを盗む手法。SMS 版がスミッシング、電話版がビッシングです。
ビジネスメール詐欺Business email compromise (BEC)
役員や取引先になりすまし、送金や機密情報の送付を指示する詐欺。
プリテキスティングPretexting
架空の背景や口実を事前に作り込んで相手を信用させる手法。
水飲み場型攻撃Watering hole attack
標的がよく訪れる正規サイトを改ざんして感染を待つ手法。
タイポスクワッティングTyposquatting
正規ドメインの打ち間違いに似せた偽ドメインを使う手法。
サプライチェーン攻撃Supply chain attack
MSP やベンダーなど取引先を経由して侵入する手法。
初期パスワードDefault credentials
製品出荷時のパスワード。変更しないと誰でもログインできる脅威ベクターになります。
D2 2.3 読了目安 12 分
脆弱性の種類
脆弱性(Vulnerability)とは、システムに存在する弱点のことです。脅威ベクターが「侵入経路」なら、脆弱性は「鍵のかかっていない窓」にあたります。どんな種類の弱点があるかを知れば、何を直すべきかが見えてきます。ここでは SY0-701 が挙げる脆弱性の分類を、仕組みのイメージとともに学びます。
アプリケーションの脆弱性 メモリインジェクション(Memory injection): 実行中のプログラムのメモリに悪意あるコードを注入して実行させます。 バッファオーバーフロー(Buffer overflow): 用意した領域(バッファ)より大きなデータを書き込み、隣のメモリを上書きしてプログラムの動きを乗っ取ります。コップに水を注ぎすぎてあふれるイメージです。 競合状態(Race condition): 処理の順番やタイミングの隙を突く問題。代表例が TOC/TOU(Time-of-check to time-of-use)で、「権限を確認した時点」と「実際に使う時点」のわずかな時間差にファイルをすり替える手口です。 悪意ある更新(Malicious update): 正規のアップデート機能を悪用し、バックドア入りの更新を配布します。ベンダーのビルド環境が侵害されると正規の署名付きで配られるため、検知が極めて困難です。 Web の脆弱性 SQL インジェクション(SQL injection)は、入力欄に SQL の断片を入れることで、アプリが組み立てるデータベース命令を書き換える攻撃です。クロスサイトスクリプティング(XSS: Cross-Site Scripting)は、Web ページに悪意あるスクリプトを埋め込み、閲覧者のブラウザで実行させる攻撃です。どちらも「入力値をそのまま信用する」ことが原因です。
ログイン画面
' OR '1'='1
攻撃者が入力
Webアプリ
入力を文字連結して
WHERE name=''
OR '1'='1'
データベース
条件が常に真
全ユーザーが一致
対策
パラメータ化クエリ・入力検証
SQL インジェクションの仕組み。入力した文字列がそのまま SQL 文に連結され、条件が常に真になって認証を突破します。 基盤・環境に由来する脆弱性 分類 内容 キーワード OS ベース OS 自体の欠陥。パッチ未適用が原因 Windows Update 未適用 ハードウェア ファームウェアの欠陥、サポート終了(EOL)、レガシー機器 修正ファームウェアが出ない 仮想化 VM エスケープ、リソース再利用(前の VM のデータ残留) ハイパーバイザー クラウド固有 設定ミス、共有責任の誤解、API の露出 公開設定のストレージ サプライチェーン サービス・ハードウェア・ソフトウェアの提供元の侵害 ベンダー経由 暗号 弱いアルゴリズム、短い鍵、自作暗号 古い TLS、MD5 設定ミス(Misconfiguration) 不要な機能が有効、権限が広すぎる 初期設定のまま モバイル サイドローディング、ジェイルブレイク 公式ストア外のアプリ ゼロデイ(Zero-day) ベンダーも未把握でパッチが存在しない 修正プログラムなし
本来VM同士は隔離されている
物理ホスト(同じ機械を共有)
VM A(攻撃者)
悪意あるコードを実行
VM B(他の顧客)
メモリを読まれる
VM C(他の顧客)
ハイパーバイザー(脆弱性あり)
脆弱性を突いて脱出
VM エスケープ。攻撃者の仮想マシンがハイパーバイザーの脆弱性を突いて、本来隔離されているはずの他の仮想マシンに到達します。 イメージ 社員が業務用 Android スマートフォンに、公式ストアを通さず Web サイトからダウンロードした APK を直接インストールしたとします。これがサイドローディング(Side loading)です。公式ストアの審査を経ていないため、メールの内容を外部に送るスパイアプリが紛れ込みやすくなります。iPhone の制限を外すジェイルブレイク(Jailbreaking)も同様に、端末の保護機能を無効にしてしまう行為です。
試験のポイント 「ベンダーに問い合わせたがパッチがない、シグネチャもない」とあればゼロデイです。「サポート終了で修正ファームウェアが提供されない」ならハードウェアの EOL(End-of-life)/レガシーの脆弱性です。「権限確認と使用の時間差」は TOC/TOU、「正規署名付きの更新にバックドア」は悪意ある更新(サプライチェーン)、「別の顧客の VM に到達」は VM エスケープ、と状況から即答できるようにしましょう。
バッファオーバーフローBuffer overflow
領域を超えるデータ書き込みで隣接メモリを上書きし、動作を乗っ取る脆弱性。
競合状態(TOC/TOU)Race condition (Time-of-check to time-of-use)
確認と使用の間の時間差を突いて対象をすり替える脆弱性。
SQL インジェクションSQL injection
入力値を通じてデータベース命令を書き換える Web の脆弱性。
クロスサイトスクリプティングCross-site scripting (XSS)
Web ページに悪意あるスクリプトを埋め込み、閲覧者のブラウザで実行させる脆弱性。
VM エスケープVM escape
仮想マシンからハイパーバイザーや他の VM へ脱出する仮想化の脆弱性。
サポート終了End-of-life (EOL)
ベンダーのサポートが終了し、修正が提供されなくなった状態。レガシー機器に多い問題です。
サイドローディングSide loading
公式アプリストアを経由せずにアプリをインストールすること。審査がないためリスクが高い行為です。
ジェイルブレイクJailbreaking
モバイル OS の制限を解除し、保護機能を無効化する行為。
ゼロデイZero-day
ベンダーも把握しておらず、修正パッチが存在しない脆弱性。
悪意ある更新Malicious update
正規の更新機能を通じて配布されるバックドア入りの更新。サプライチェーン攻撃の一形態です。
D2 2.4 読了目安 15 分
攻撃の指標分析
攻撃を防ぐには、まず「攻撃が起きている」と気づく必要があります。ログやアラートに現れる攻撃の痕跡を指標(Indicator)と呼びます。この出題目標では、代表的な攻撃手法のパターンと、それがどんな指標として現れるかを結びつけて覚えることが目標です。
マルウェアの種類 種類 特徴 キーワード ランサムウェア(Ransomware) データを暗号化して身代金を要求 復号と引き換えに支払い トロイの木馬(Trojan) 便利なソフトを装って侵入 無料ツールに偽装 ワーム(Worm) ユーザー操作なしで自己増殖し拡散 ネットワーク内に自動で広がる ウイルス(Virus) ファイルに寄生し、実行されると感染 ユーザーの操作が必要 スパイウェア(Spyware) 行動や情報をこっそり収集 閲覧履歴の送信 キーロガー(Keylogger) キー入力を記録して盗む パスワードが漏れる ロジックボム(Logic bomb) 特定の条件で発動する仕込み 退職後・アカウント削除時に発動 ルートキット(Rootkit) OS の深部に潜み自身を隠す プロセスやファイルが見えない ブロートウェア(Bloatware) 不要なプリインストールソフト 攻撃面を広げる
ネットワーク攻撃 分散型サービス妨害(DDoS: Distributed Denial of Service)は、多数の送信元から大量の通信を送ってサービスを停止させる攻撃です。その中でも反射型(Reflected)は送信元 IP を被害者に偽装して第三者のサーバーに問い合わせを送り、応答を被害者に向かわせる手口、増幅型(Amplified)は小さな問い合わせに対して大きな応答が返る DNS や NTP を使い、攻撃の威力を何十倍にも増やす手口です。
攻撃者
オープンDNS 1
オープンDNS 2
オープンDNS 3
被害者サーバー
小さな問い合わせ
送信元IPを被害者に偽装
大きな応答(増幅)
頼んでいない応答が殺到
反射・増幅型 DDoS。攻撃者は送信元を被害者に偽装した小さな問い合わせを多数の DNS サーバーに送り、大きな応答が被害者に殺到します。 オンパス攻撃(On-path attack)は、通信経路の途中に攻撃者が割り込んで盗聴や改ざんを行う攻撃で、旧称は中間者攻撃です。ほかに DNS 応答を偽造して偽サイトへ誘導する DNS 攻撃、盗んだ認証データを再送して認証を通すクレデンシャルリプレイ(Credential replay)、無線 LAN への攻撃があります。
本来の経路(直接つながるはず)
クライアント
攻撃者(中継)
サーバー
通信を盗聴・改ざん・ダウングレード
対策: TLS/HTTPS・証明書の検証・VPN
オンパス攻撃。クライアントとサーバーの間に攻撃者が入り、通信を盗聴・改ざん・ダウングレードします。 アプリケーション攻撃と暗号攻撃 インジェクション、バッファオーバーフロー: 2.3 の脆弱性を実際に悪用する攻撃。 権限昇格(Privilege escalation): 一般ユーザーから管理者権限を奪う攻撃。 ディレクトリトラバーサル(Directory traversal): URL に「../」を入れて公開範囲外のファイルを読む攻撃。 フォージェリ(Forgery): 利用者になりすまして意図しないリクエストを送らせる攻撃。 リプレイ(Replay): 正規の通信を記録して再送する攻撃。 ダウングレード(Downgrade): TLS 1.3 が使えるのに、わざと古く弱いバージョンで接続させて解読する攻撃。 衝突(Collision)とバースデー攻撃: 異なる入力から同じハッシュ値が得られる衝突を、誕生日のパラドックスにより約 2^(n/2) 回で見つける攻撃。 パスワード攻撃と物理攻撃 ブルートフォース(Brute force)は1つのアカウントにあらゆるパスワードを総当たりで試す攻撃で、失敗が集中するためロックアウトで検知されやすい手口です。パスワードスプレー(Password spraying)は逆に、多数のアカウントによく使われるパスワードを1回ずつ試す攻撃で、ロックアウトを回避するため発見が難しくなります。物理攻撃には、錠前へのブルートフォース、社員証の RFID クローニング(RFID cloning)、停電などの環境的(Environmental)攻撃があります。
ブルートフォース
パスワードスプレー
pass0001
pass0002
pass0003 …
user1
1人に大量の試行
→ ロックアウトで検知される
Spring2026!
user1
user2
user3 …
多数の人に1回ずつ
→ ロックアウトを回避
ブルートフォース(1人に大量の試行)とパスワードスプレー(多数の人に1回ずつ)の違い。後者はロックアウトを回避します。 攻撃の指標(インジケーター) アカウントロックアウト(Account lockout): ブルートフォースの兆候。 同時セッション(Concurrent session usage): 同じアカウントが複数の場所から同時利用。 あり得ない移動(Impossible travel): 東京でログインの10分後に南米からログイン。 ブロックされたコンテンツ(Blocked content): セキュリティ製品が止めた記録。 リソース消費・アクセス不能: CPU の異常な使用、サービスが応答しない。 周期外のログ(Out-of-cycle logging): 業務時間外の大量のログや更新。 ログの欠落(Missing logs): 攻撃者が痕跡を消した可能性。 公表・文書化された指標(Published/documented): 公開された侵害指標との一致。 イメージ 退職した管理者のアカウントが削除された直後に、基幹サーバーのデータが一斉に消去されたとします。「特定の条件(アカウント削除)で発動した」ことから、これは在職中に仕込まれたロジックボムです。同じ退職者でも、残っていたアカウントで直接ログインして消去したなら、内部脅威による不正アクセスでありマルウェアではありません。
試験のポイント マルウェアは「どう広がるか」「何をするか」で区別します。自己増殖して操作不要ならワーム、便利ソフトに偽装ならトロイの木馬、自身を隠してプロセス一覧に出ないならルートキットです。パスワード攻撃は「少数のパスワードを多数のアカウントに」ならスプレー、「1アカウントに多数のパスワード」ならブルートフォース。DDoS で「送信元を偽装」「DNS の応答が殺到」とあれば反射・増幅型です。
ワームWorm
操作なしで自己増殖し自動で広がるマルウェア。
ロジックボムLogic bomb
特定の条件で発動するよう仕込まれた悪意あるコード。
ルートキットRootkit
OS の深部に潜んで自身を隠すマルウェア。
反射・増幅型 DDoSReflected / Amplified DDoS
送信元を偽装し、第三者のサーバーからの増幅された応答を被害者に集中させる攻撃。
オンパス攻撃On-path attack
通信経路の途中に割り込んで盗聴・改ざんする攻撃。旧称は中間者攻撃。
ダウングレード攻撃Downgrade attack
わざと古く弱いプロトコルや暗号で接続させる攻撃。
バースデー攻撃Birthday attack
約 2^(n/2) 回の試行でハッシュの衝突を見つける攻撃。
パスワードスプレーPassword spraying
多数のアカウントに少数のパスワードを1回ずつ試し、ロックアウトを回避する攻撃。
あり得ない移動Impossible travel
物理的に不可能な短時間で離れた場所からログインしている指標。
D2 2.5 読了目安 10 分
緩和策(企業のセキュリティを強化する手法)
緩和策(Mitigation)とは、脅威や脆弱性による被害を「起こりにくくする」「起きても小さくする」ための対策です。攻撃をゼロにはできなくても、侵入経路を減らし、侵入されても広がらないようにし、早く気づけるようにすることで、被害は大きく抑えられます。試験では「この状況で最も適切な緩和策はどれか」という形式で問われます。
代表的な緩和策 緩和策 何をするか 効く場面 セグメンテーション(Segmentation) ネットワークを区画に分け、区画間の通信を制限 感染の横展開を防ぐ、パッチできない機器を守る アクセス制御(ACL・権限) 誰が何にアクセスできるかをリストで定義 不要なアクセスを遮断 アプリケーション許可リスト(Allow list) 審査済みの実行ファイルだけ起動を許可 未承認ソフトによる感染を防ぐ 隔離(Isolation) 危険なシステムや感染端末を切り離す 被害拡大の防止、サポート切れ機器 パッチ適用(Patching) 脆弱性の修正プログラムを適用 既知の脆弱性をなくす 暗号化(Encryption) 保存データや通信を暗号化 盗まれても読めなくする 監視(Monitoring) ログやアラートで異常を検知 攻撃の早期発見 最小権限(Least privilege) 業務に必要な最低限の権限だけ与える 権限悪用・権限昇格の被害を限定 構成の強制(Configuration enforcement) 決めた設定から逸脱したら自動で戻す 設定ミスの防止 廃棄(Decommissioning) 不要になった機器を適切に撤去・データ消去 攻撃面の残存と情報漏えいの防止
分割前(フラットなLAN)
分割後(セグメンテーション)
業務PC(感染)
会計サーバー
制御用端末
来客Wi-Fi
全員が互いに直接通信できる
感染が全体に横展開
業務PC(感染)
FW / ACL
会計サーバー
FW / ACL
制御用端末
被害を区画内に封じ込め
セグメンテーションの前後。分割前は1台の感染が全体に広がりますが、分割後はファイアウォールや ACL で区画内に封じ込められます。 イメージ 工場にサポートが終了した制御用端末があり、パッチを適用できないとします。この端末をオフィスの業務ネットワークと同じ LAN に置いたままでは、業務 PC の感染が制御系に波及します。パッチが当てられない以上、最も現実的な対策はネットワークを分割して制御系を別の区画に隔離し、必要最小限の通信だけ許可することです。「直せないなら、分けて守る」が基本の考え方です。
ハードニング(堅牢化)の手法 ハードニング(Hardening)とは、1台1台のシステムの攻撃面を減らして固くすることです。新しいサーバーを導入したら、使う前に次のような作業を行います。
暗号化(Encryption): ディスクや通信を暗号化し、盗難や盗聴に備える。 エンドポイント保護の導入(Installation of endpoint protection): ウイルス対策や EDR を入れる。 ホストベースファイアウォール(Host-based firewall): 端末ごとに通信を制限する。 HIPS(Host-based Intrusion Prevention System): 端末上で不審な動作を検知して止める。 ポート・プロトコルの無効化(Disabling ports/protocols): Telnet、FTP、SNMPv1 など使わないサービスを止める。 初期パスワードの変更(Default password changes): 出荷時のパスワードを必ず変える。 不要なソフトウェアの削除(Removal of unnecessary software): ブロートウェアや使わない機能を消し、攻撃面を減らす。 試験のポイント 選択肢の中から「最も適切」を選ぶには、問題文の制約を読み取ります。「パッチが適用できない」ならセグメンテーションや隔離、「未承認ソフトの実行を防ぎたい」ならアプリケーション許可リスト、「使っていないサービスが有効」ならポート・プロトコルの無効化、「旧サーバーを撤去」なら廃棄(データ消去を含む)です。許可リストと拒否リストの違いにも注意しましょう。許可リストは「許可したもの以外すべて禁止」で、より強力です。
セグメンテーションSegmentation
ネットワークを区画に分けて区画間の通信を制限し、被害の横展開を防ぐ対策。
アクセス制御リストAccess control list (ACL)
誰(何)がどの資源にアクセスできるかを定義したリスト。
アプリケーション許可リストApplication allow list
承認済みのプログラムだけ実行を許可する仕組み。未承認ソフトによる感染を防ぎます。
隔離Isolation
危険なシステムや感染した端末をネットワークから切り離すこと。
最小権限Least privilege
業務に必要な最低限の権限だけを与える原則。
構成の強制Configuration enforcement
定めた設定基準から逸脱した状態を検出し、自動的に是正すること。
廃棄Decommissioning
不要になったシステムをデータ消去のうえ適切に撤去し、攻撃面を残さないこと。
ハードニングHardening
不要なサービスやソフトを削除し、設定を固めてシステムの攻撃面を減らすこと。
HIPSHost-based intrusion prevention system
端末上で不審な動作を検知し、その場で遮断する仕組み。